「生活保護」という言葉に、みなさんどんなイメージをお持ちですか。
 ポジティブかネガティブかと問われれば、ネガティブな印象をお持ちの方が大半ではないでしょうか。なぜでしょう。それは、生活保護に絡んだ話題の多くが「不正受給」、または「打ち切り」「水際作戦」など、生活保護を受けたくても受けられない、そしてその結果、「孤独死」が起きた、などというものばかりで、「生保のおかげで助かった」とか「生保があるから安心」などの話を一切聞かないからではないでしょうか。
 なんでそんなことになってしまっているのか。「健康で文化的な最低限度の生活を保障する」との憲法条文はどうなってしまったのか。生活保護をめぐる動向から探っていきたいと思います。

02 May
 日本は本当に地震の多い国だと思います。

 熊本の地震は本当に驚きました。私も神戸の地震を直接経験しているので、今でも少しでも揺れると怖くて緊張します。当時は大きな揺れが1回で、その後余震が何度も来たのを覚えています。

 

さて、2014年5月に、不正受給通報システムのことを書きました。そのシステムがより具体化されて実施されたとみられることが起こりました。それが大分県別府市の「パチンコ店に入り浸っていたら生活保護を停止する」というものです。生活保護制度への締め付けがここまできたのかと思うと同時に、改めて、市民による通報ってどうなんだろうかと疑問を感じました。

 

2014年に書きましたが、パチンコ店に入り浸ることが止められなければギャンブル依存症の可能性があります。依存症とは病気で治療の対象です。また、生活保護費は決して高い金額ではありません。食費と光熱水費を捻出したら、ほとんど残らないでしょう。食費といっても自炊をしないで外食で済まそうと思えば、生活保護費ではおそらく賄えなくなるでしょう。そんな生活保護費からパチンコ店に入り浸る費用を捻出するのですから、どんな暮らしを送っているのか、私はそちらのほうが気になります。本当に目を向けなければならないのは、パチンコではなくて普段の食生活なのかもしれません。

 

結局大分県別府市の件は、大分県が「生活保護制度にはパチンコをしたら生活保護を停止してもよいという規定はない」と指導したために停止することを止めました。何の規定もないのに生活保護を停止したというのですから、これはおそらく生活保護法第1条のみならず、第56条の「不利益変更の禁止」に当たる事項ではないかと思われます。

 

このような案件を読んでいつも思うことがあります。老齢加算廃止取り消し訴訟の支援者の方がおっしゃっていたことで、日本人には「貧しいものは、清く、質素につつましく暮らさなければならない」という「清貧の思想」が非常に根強く浸透しているというものです。だから行政が動かなくても「パチンコ店に入り浸っている」という情報が市民から寄せられるのだと思います。

 

ここまで書いて、ふと思いました。誰が生活保護を利用しているのかを知っているのは、その地域の行政職の方か民生委員の方か、医療や福祉サービス事業所職員程度だと思うのです。これらの方たちには守秘義務が課せられており、誰が何の制度を利用しているということは他に漏らしてはならないのです。なのに、なぜ一般市民が通報できるのか?どこかで情報が漏れているのか?だとしたら、これは個人情報の情報漏えいという重大な問題だと思うのです。マイナンバー制度であれだけ個人情報保護が言われているのに、なぜ生活保護だけ市民による通報という、個人情報が筒抜けであることが前提のシステム構築がなされているのでしょうか?

 

突き詰めると、個人情報漏えいという重大な問題の陰には、生活保護ケースワークが行われているのか、それがケースワークとして機能しているのかどうかという根本的な問題が見え隠れしていると私は思うのです。パチンコ店に入り浸っているから停止するのがケースワークだと言われたら、それはケースワークの本質とは何かが問われるほどの深い問題なのです。つまり、パチンコ店に入り浸っているから保護を停止するというのが生活保護行政だとしたら、生活保護行政の本質とは何かが問われる、というのが今回のパチンコ問題だと思うのです。

 

元金沢星稜大学非常勤講師 冨家 貴子