「生活保護」という言葉に、みなさんどんなイメージをお持ちですか。
 ポジティブかネガティブかと問われれば、ネガティブな印象をお持ちの方が大半ではないでしょうか。なぜでしょう。それは、生活保護に絡んだ話題の多くが「不正受給」、または「打ち切り」「水際作戦」など、生活保護を受けたくても受けられない、そしてその結果、「孤独死」が起きた、などというものばかりで、「生保のおかげで助かった」とか「生保があるから安心」などの話を一切聞かないからではないでしょうか。
 なんでそんなことになってしまっているのか。「健康で文化的な最低限度の生活を保障する」との憲法条文はどうなってしまったのか。生活保護をめぐる動向から探っていきたいと思います。

26 Dec

 先週半ばに雪が降ってから、めっきり寒くなりました。

 雪といっても県全体がすっぽりと雪に覆われるわけではありません。ニュースの天気予報では平均の降雪量が発表されるので、他県の方が聞くと雪が多いところだと思われますが、降雪量の多いところ少ないところがあります。多いところといえば山のほうです。市街地でも山に近づくほど降雪量は多くなります。反対に降雪量が少ないのは海の方です。日本海は風が非常に強く吹くので、雪が風に飛ばされるそうです。能登半島、輪島などに行きますと、「間垣」と呼ばれる背の高い竹の垣根で風を防いでいる家が見られます。

 

 さて今回は、生活保護基準が更に削減されるかもしれないことに触れたいと思います。

 

財務省は、低所得世帯の住宅費と冬の光熱費よりも生活保護世帯の住宅費と冬の光熱費のほうが高いとして、住宅扶助基準と冬季加算を引き下げることを取り上げ、それを受けて現在厚生労働省で専門委員による議論が行われています。物価が下がっているとして、3年かけて生活扶助基準を削減することを決定してから食料品を中心とした物価はどんどん上がっています。そんな中、更に引き下げることが進められています。

 

住宅扶助に関しては、低所得世帯の家賃と比べて2割ほど高く支出しているというのが理由です。しかし、単純に低所得世帯と生活保護世帯を比較できるものではありません。低所得世帯はすべての収入の中から家賃等住宅費を払います。住宅費は家計に占める割合が高い費目なので、食費や光熱費のことを考えるとどうしても家賃を抑えざるを得ません。生活保護世帯の住宅費は住宅扶助で支払われますが、食費や光熱費は生活扶助でとそれぞれが別々に支払われます。お互いにお互いの費用を圧迫しないのです。また、低所得世帯の低家賃の住居が最低面積をクリアしていても、その住環境が本当に「健康で文化的」なのかは実際に住んでいる様子を確認しないと判断できかねません。

 

冬季加算に関しては、北海道や青森といった日本でも非常に寒さの厳しいところの低所得世帯と生活保護世帯の暖房代等を比較すると、生活保護世帯が最大で2万円高くなっていたというものです。これも住宅扶助の場合と同じで、生活保護世帯は食費などと暖房費などが別に出されているので、家計を圧迫しない構造になっているのです。互いに家計を圧迫すると、それぞれの費用が「健康で文化的」な費用ではなくなってしまうのです。低所得世帯は暖房費や防寒着代を節約してこの費用になっているのではないかと思われます。その節約が無理を強いたものかどうかは実際にどのように暖房等を使用しているのか見てみないと分からないのです。本当に寒いところ、雪の多いところというのは、エアコンをつけるだけでは家の中は暖まらないのです。灯油を使用する暖房器具を使っている家庭が多いのです。その灯油も値段が上がっています。また、雪の多いところは雪対策をしなければなりません。雪用の靴、雪かき用の道具、防寒着、それなりのものが必要です。

 

委員からは削減に対して慎重意見が出ているとのことですが、ここまで「削減ありき」の生活保護基準見直しになると、今の国の姿勢は、最低限度の生活の指標である「憲法25条」はどうでもいいのではないかと思ってしまいます。社会保障が「自助・共助・公助」に変質させられようとしている中で、生活保護制度は権利としてではなく、戦前の救貧的な制度に位置づけられてしまうという危機感が募ります。

 

いつも疑問に思うのですが、先ほども書いたように、実態を見ないとどのような生活なのか分からない、数字からは出てこないものが出てくるものと思うのですが、実態の調査は行わないのでしょうか。30年ほど前にも生活保護の議論をした際に委員から、「ケーススタディをしないと意味がない」というような意見が出ていましたが、数字だけ追うことを何十年も繰り返しているような気がします。

 

元金沢星稜大学非常勤講師 冨家 貴子