「生活保護」という言葉に、みなさんどんなイメージをお持ちですか。
 ポジティブかネガティブかと問われれば、ネガティブな印象をお持ちの方が大半ではないでしょうか。なぜでしょう。それは、生活保護に絡んだ話題の多くが「不正受給」、または「打ち切り」「水際作戦」など、生活保護を受けたくても受けられない、そしてその結果、「孤独死」が起きた、などというものばかりで、「生保のおかげで助かった」とか「生保があるから安心」などの話を一切聞かないからではないでしょうか。
 なんでそんなことになってしまっているのか。「健康で文化的な最低限度の生活を保障する」との憲法条文はどうなってしまったのか。生活保護をめぐる動向から探っていきたいと思います。

06 Jun

  急に気温が上がってきました。

   気温が上がるということは、私の部屋の気温もぐっと上がることにつながり、切り花が枯れ、食べ物がすぐ傷むということが起こります。梅雨もこれから本格的に始まります。北陸地方は太平洋側に比べて湿度が高いので湿気対策が必要だと、金沢に来たときに不動産屋や電機屋の方が話してくださり、「そうなんかー」と、びっくりしたのとよく分からないという思いで心の中で呟いていましたが、結局冬に外に洗濯物を干せないのがきっかけで除湿機を買い、必需品となってしまいました。

 

 さて今回は、生活保護法が「改正」され、今年2月、それに伴って厚生労働省が「生活保護法施行規則の一部を改正する省令(案)」(以下、省令案)を発表し、それに関してパブリックコメントで批判され、今年4月に修正せざるを得なくなったことに少し触れたいと思います。

 

 省令案の内容です。まず、生活保護の申請についてです。

 

 「保護の開始の申請等は、申請書を保護の開始をする者の居住地又は現在地の保護の実施機関に提出して行うものとする。ただし、身体上の障害があるために当該申請書に必要な事項を記載できない場合その他保護の実施機関が当該申請書を作成することができない特別の事情があると認める場合は、この限りではないこととする。」

 

 パブリックコメントでは、「国会での修正を反映されていない」「福祉事務所での申請のハードルがこれまでより上がってしまうこと、申請をためらう者が増えることで真に保護が必要にもかかわらず保護を受けることができない人が増えることになる」「現行でも認められている高騰による申請が例外的な扱いである」等の批判が寄せられました。これらを受け、今年7月に施行予定の省令(4月18日発表)では、このただし書きの部分が削除されました。 

 

 次に、扶養義務者に対する報告の求めに関してです。

 

「保護の実施機関は、扶養義務者に報告を求める場合は、あらかじめ、当該扶養義務者が民法の規定による扶養義務を履行しておらず、かつ、当該求めが次のいずれかの場合にも該当していない旨を確認するものとする。①費用の徴収を行う蓋然性がない場合。②配偶者からの暴力を受けている者であると認めた場合。③当該通知を行うことにより要保護者の自立に重大な支障を及ぼす場合。」(一部省略しています)

 

 パブリックコメントでは、「これまでの国会の政府答弁等では、原則として行わず極めて例外的な場合に限り行うものとしていたにもかかわらず、省令案では原則と例外が逆転している。これでは、実質的に扶養義務者による扶養を保護の要件となり、本当に保護が必要な人の申請の妨げとなる」等の批判が寄せられました。

 

これらを受け、今年7月に施行予定の省令(4月18日発表)では、扶養義務者への通知は、①費用徴収を行う蓋然性が高いと認めた場合、②配偶者からの暴力を受けているものでないと認めた場合、③当該求めを行うことにより要保護者の自立に重大な支障を及ぼすおそれがないと認めた場合と、省令案の原則と例外を逆転させました。

 

ごく一部のみの紹介ですが、省令案が、国民の声を反映するとされる国会で決まった通りになっておらず、厚生労働省が書き換えていたのにびっくりしました。パブリックコメントを読むと、どこがどう違うのか、書き換えることがどのような影響を与えるのかがよく分かりました。それを踏まえて省令案が修正されました。つまり、厚生労働省は、一度国民の声を無視して、再度国民の声を徴収し、それを反映したということになるのではないかと思われます。

 

具体的な社会保障制度の内容に対して国民の声が反映されないと、結局は社会保障制度の権利が国民のものにならないのだと、今回の省令案、パブリックコメント、それを受けての省令の3つを読んで痛感しました。

 

元金沢星稜大学非常勤講師 冨家 貴子

 

 

参考

「資料 生活保護法施行規則の一部を改正する省令(案)出される」『賃金と社会保障』No.1608、賃社編集室、2014年、p16-19

「パブリックコメント1166件を受けて、厚生労働省が「改正」生活保護法に関する省令案を抜本修正!」(このうち、「生活保護法施行規則の一部を改正する省令(案)に対して寄せられた御意見について 平成26年4月18日 厚生労働省 社会・援護局保護課」「生活保護法施行規則の一部を改正する省令」を参考とした)『賃金と社会保障』No.1608、賃社編集室、2014年、p28-44