「生活保護」という言葉に、みなさんどんなイメージをお持ちですか。
 ポジティブかネガティブかと問われれば、ネガティブな印象をお持ちの方が大半ではないでしょうか。なぜでしょう。それは、生活保護に絡んだ話題の多くが「不正受給」、または「打ち切り」「水際作戦」など、生活保護を受けたくても受けられない、そしてその結果、「孤独死」が起きた、などというものばかりで、「生保のおかげで助かった」とか「生保があるから安心」などの話を一切聞かないからではないでしょうか。
 なんでそんなことになってしまっているのか。「健康で文化的な最低限度の生活を保障する」との憲法条文はどうなってしまったのか。生活保護をめぐる動向から探っていきたいと思います。

21 May

 少しずつ過ごしやすい季節になってきました。

 比較的近くにある農協の店では、山菜が棚にたくさん並んでいます。大阪にいるときは山菜をあまり見かけたこともなかったような気がするのですが、金沢にいると、スーパーでも山菜をよく見かけます。やっぱり自然が豊かなんだなあと思います。

 

 最近は生活保護制度がなにかと話題になっています。生活保護法「改正」による厚生労働省令の変更や稼働能力をめぐっての訴訟など、生活保護制度の情勢が刻々と動いているというのは確かです。

 

 さて、今回は、各市が市民向けに生活保護通報システムを設置していることを取り上げたいと思います。2011年の大阪府寝屋川市を皮切りに、全国の12の市に、①貧困ビジネス、②生活困窮者、③不正受給、の3つに対する市民からの通報専用電話を設けたとのことです。私は、この大きな狙いは③の不正受給ではないかと思ってしまいました。しかし、北陸中日新聞2014年5月9日付によると、生活保護を利用している人の中で不正受給と認められた人は全生活保護費のわずか0.5%ほどです。圧倒的な方は不正受給などしていないのです。もちろん生活困窮者の通報もあり、生活保護利用につながっており、一概に悪いとは言えないのですが、0.5%のためにわざわざ通報システムを設ける必要があるのか、と思ってしまいます。

 

 生活保護ケースワーカー対象のセミナーなどに参加すると、「市民の方からあの人は朝からパチンコをしているなどの通報が寄せられる」とケースワーカーが話しておられます。しかし、ケースワーカーによると、その人は朝からパチンコをせずにはおれないギャンブル依存症、つまり病気を持った方ということがあり得るとのことです。生活保護を利用してもなおそのような生活になるのには、何らかの理由があるのです。新聞にも書いてありましたが、ただ単に通報システムを設けると、生活保護に至る理由を考えることなく、目についたことはすぐに通報するという、市民が市民を監視するシステムを作っているに過ぎないのではないかと思うのです。通報システムをわざわざ設けなくても、ケースワーカーの話のように、市民からの通報というのはあるものなのです。

 

私はいつも思うのです。児童手当を受けていても、児童扶養手当を受けていても、年金を受けていても、失業手当を受けていても、市民から通報があったという話は聞きません。しかし、生活保護に関してだけは全く別なのです。このようなシステムを作るということは、ただでさえ負い目を感じながら生活保護を利用している人に対して更に追い打ちをかけることになるのではないかと感じるのです。自立支援プログラムで社会的自立を目指すために居場所づくりを行うとありましたが、その居場所を行政が自ら掘り崩しているのではないかと思うのです。

 

 なにより、不正受給をしている人がわずか0.5%ほどに対して、生活保護が必要とされならが利用していない人、制度の枠から漏れている人が、日本では30%近くにも上るのです。パーセンテージだけでいっても、この漏給の問題の方があるかに重要です。憲法で認められた権利が保障されていない方が30%近くもいるということは、民主主義の存続にもかかわる重大な問題なのです。

 

この文章を書いているとき、学生時代のサークルでの議論を思い出します。乱給、つまり、生活保護が必要でない人も利用しているので、不正受給を取り締まるのがまず先ではないかという話がありました。それに対して、生活保護が必要とされながら利用していない人、つまり漏給を失くすことが一番大事で、乱給の検討はそれからではないかという議論です。もう20年以上前の話です。20年以上前に議論したことを、いまだに議論し続けないといけないのかと思うと、日本の生活保護制度に対する意識や考えというのは未だに変化していないのだろうか、しかし権利を権利として認められないことに対していくつも裁判が争われてきた事実もあるし・・・、と、自分でも生活保護制度に対する認識は変化したのかどうかよく分からなくなる時があるのです。

 

元金沢星稜大学非常勤講師 冨家 貴子