「生活保護」という言葉に、みなさんどんなイメージをお持ちですか。
 ポジティブかネガティブかと問われれば、ネガティブな印象をお持ちの方が大半ではないでしょうか。なぜでしょう。それは、生活保護に絡んだ話題の多くが「不正受給」、または「打ち切り」「水際作戦」など、生活保護を受けたくても受けられない、そしてその結果、「孤独死」が起きた、などというものばかりで、「生保のおかげで助かった」とか「生保があるから安心」などの話を一切聞かないからではないでしょうか。
 なんでそんなことになってしまっているのか。「健康で文化的な最低限度の生活を保障する」との憲法条文はどうなってしまったのか。生活保護をめぐる動向から探っていきたいと思います。

08 Apr

 3月に入ってから寒い日が続き、ここ金沢でも雪が降りましたが、ようやく暖かくなってきました。 

  木蓮の白い花が咲き、さくらのつぼみも膨らんでくるのを見て、植物は春が来るのを知っているのだなあとふっと思ったりしておりました。4月に入ると、金沢城と兼六園の桜はほぼ満開となり、兼六園は1週間無料公開されています。たまたま金沢城と兼六園の間の道路を車で通ることがあったのですが、お城に桜の花というのもなかなかいい景色です。

 さて、今回は、私がいろいろとお世話になっている方の思いを伺う機会がありました。そのことについて少し触れてみたいと思います。 

この方をDさんとします。Dさんは生活に困っている方に生活保護の申請を一緒に行ったりされておられる方です。その方がある方の生活保護申請にかかわり、生活保護を利用できるようになりました。ある方をFさんとします。Fさんは生活保護を利用するまで大変切り詰めていた生活を送っていたため、生活保護費を使い切れずに貯金として残ってしまったそうです。貯金が結構な額になったため、一旦生活保護を停止することになりました。これを知ったDさんは、本人の生活保護費は本人が好きに使えるはずだと、Fさんと話し合い、不服審査請求をすることになったそうです。

 Dさんは、預貯金として認められる額があまりにも少ないし、預貯金として認められる額が多ければ、Fさんは生活保護をいったん停止することにはならなかったのです。Dさんによると、Fさんは生活保護利用まで大変苦労されたのが現在にも影響して、電気をつけない生活を送っているのだそうです。 

私はFさん個人の保護変更決定に対しての不服審査請求かと思っていましたら、実はそうではなかったのです。支援者であるDさんは、そもそも生活保護制度で認められる預貯金が少ない、一般の人もいくらまでなら貯金ができるのか知らない、知らされていないから生活保護利用世帯の生活がどのようなものか理解されていないと話していました。そして、この不服審査請求をきっかけに生活保護申請時、生活保護利用時の預貯金の額がどんなものか多くの人に知ってほしいとの思いを含んだ不服審査請求だったのです。不服審査請求はFさんの住んでいる都道府県知事に対して行い、不服審査の相手はFさんが住んでいる市町村福祉事務所です。不服審査請求を行えば、行政訴訟(裁判)の道も開けます。 

実は、これまでにも預貯金を巡って裁判が行われていました。秋田県の加藤訴訟が特に知られているかと思います。私が大学生の頃の話だったと思います。将来の介護費用のために、塩サバばかり食べて生活保護費を切り詰めて生活していた加藤さんの貯金を福祉事務所が収入認定してしまったことに対して訴訟が起こされました。判決は、原告勝訴です。判決文の中で裁判官は、預貯金の使途は個人の自由であることを明記しています。ご本人が何らかの目的があって一定額を貯金しているのであれば、それは認められるのです。例えば、私が勤めていた救護施設では、介護保険制度施行前ですが、特別養護老人ホームに措置変更される方は、生活保護制度を引き続き利用して生活するのではなく、老人福祉法に基づく措置費によって生活することになるので、お小遣いとしてもらっていた生活保護制度の障害者加算や老齢加算がなくなることになります。そこで、特別養護老人ホームに行ってもお小遣いに困らないように、福祉事務所の方と相談して、貯金を認めてもらっていました。 

Dさんが思っているのは、「目的があれば貯金は認められる」のではなく、そもそも生活保護利用前も利用後も、一定の預貯金を認めるべきだというものです。今の制度では、生活保護申請時に、1か月の生活保護費の半分しか手持ち金は認められません。生活保護の要否判定は2週間以内に行わなければならないので、申請してから2週間後には手持ち金はなくなるという計算です。つまり、生活保護利用開始時には、スッカラカンの状態でないといけないのです。

 この預貯金を一定額認めるかどうかの問題は、厚生省の時代から学識経験者が指摘していました。預貯金なしに生活することは、現代では非常に困難なのです。預貯金があって初めて家計に柔軟性が生まれ、不意の出費にも対応できるのです。

今回Dさんの話を伺って、支援者の方がどのようなことを常日頃思って支援しているのかを知り、現行生活保護制度の抱えている問題を改めて考えさせられました。 

 

注:個人の特定を避けるため、実際の話を少し変えて紹介しています。

 元金沢星稜大学非常勤講師 冨家 貴子