「生活保護」という言葉に、みなさんどんなイメージをお持ちですか。
 ポジティブかネガティブかと問われれば、ネガティブな印象をお持ちの方が大半ではないでしょうか。なぜでしょう。それは、生活保護に絡んだ話題の多くが「不正受給」、または「打ち切り」「水際作戦」など、生活保護を受けたくても受けられない、そしてその結果、「孤独死」が起きた、などというものばかりで、「生保のおかげで助かった」とか「生保があるから安心」などの話を一切聞かないからではないでしょうか。
 なんでそんなことになってしまっているのか。「健康で文化的な最低限度の生活を保障する」との憲法条文はどうなってしまったのか。生活保護をめぐる動向から探っていきたいと思います。

05 Aug

 最近変な天気が続いています。

 

金沢市というか石川県は雷が非常に多く発生するところで有名です。金沢城の天守閣が落雷で崩壊してしまったのは有名な話です。変な天気というのは、夜になると雷がほぼ毎日鳴り、雨がザーッと降り、明け方を越えて朝方になると止むというものです。一体いつになったら梅雨のような天気が明けるのでしょうか。もう8月だというのに。

 

今回は、某テレビ番組を観て驚いたことを書きたいと思います。大変問題となっている「脱法ハウス」です。これは、ビルの中の一つの部屋を幾つにも仕切り、そこに安い家賃で入居させるというものです。番組で観た「脱法ハウス」は、ビルの一室をベニヤ板で2~3つに仕切り、3畳ほどの空間を作り、そこを住居とするものです。部屋には窓がなく、住宅基準法や消防法にも違反するものです。番組を観て最初に思ったことは、「ここは19世紀のイギリスか!?」ということです。

 

 19世紀のイギリス、特に労働者階級の住んでいた住居は本当に粗末で不衛生なものでした。F.エンゲルスが『イギリスにおける労働者階級の状態』で克明に記しているので、一読していただければわかると思いますが、労働者階級の住宅は互いに密集し合い、地上に住むことができればまだよい方で、低賃金の労働者は家賃を抑えるために地下室に住んでいました。しかも、窓もない一つの部屋に一世帯、または二世帯が同居するというものです。ベッドはなく、部屋の隅に藁を敷いて寝ていました。トイレなど下水道は整っていなかったので、排泄物は住宅前の道路に放り出されたままで、悪臭を放ち、非常に不衛生な状態でした。また、同じ部屋に男女が寝るという状態でしたので、道徳的にも問題となっていまいした。この住宅の貧困が病気を蔓延させたこともあり、20世紀に入り、住環境の整備と保健衛生サービスがセットで政策として打ち出されました。住宅だけを取り上げますと、衛生的な環境を作り出すために、イギリス政府は労働者住宅を建設し、その際に裏庭(Backyard)を作り、住宅同士が密接しないようにしました。この労働者住宅は、映画「小さな恋のメロディ」などで見ることができます。

 

 日本では、住宅確保の自己責任、公営住宅の絶対的不足もあり、特に都心部では安い家賃で十分な広さの住宅を確保することが困難になっています。番組では、このような「脱法ハウス」に住む住民の多くが低賃金で、住むところを確保できないという問題を抱えていることを指摘していました。私の実家の住宅事情も非常に貧困で、その中で暮らしてきた者にとって、「脱法ハウス」は他人事として捉えられない思いで観ていました。番組では、やっとの思いで仕事を見つけ、その仕事を続けたく生活保護申請に行った男性が、職員に仕事を辞めて施設入居を勧められ、申請を取り下げる場面がありましたが、福祉事務所に勤めている方に尋ねますと、住宅扶助を単給で利用できるとのことでした。

 

 番組を観て、この問題をどう捉えたらよいのか考えています。突き詰めれば、日本の住宅政策の失敗が原因でこのような結果を招いているのです。そのような背景をみると、「脱法ハウス」は貧困ビジネスとも捉えられます。しかし、労働環境の悪化が進み、低賃金の労働者にとっては「脱法ハウス」であっても、自分の住居には変わりないのです。そこを自分の住所にして就職活動ができ、実際に働くことができるのです。「脱法ハウス」を肯定する立場にはないのですが、公営住宅が急に立ち並ぶことはなく、民間の借家が家賃を下げるわけでもなく、低所得者にとって住居の確保がこれほどまでに難しいものだということを改めて感じたのです。やはり、緊急に対応できる制度は生活保護の住宅扶助単給しかないのでしょうか。

 

元金沢星稜大学非常勤講師 冨家 貴子