「生活保護」という言葉に、みなさんどんなイメージをお持ちですか。
 ポジティブかネガティブかと問われれば、ネガティブな印象をお持ちの方が大半ではないでしょうか。なぜでしょう。それは、生活保護に絡んだ話題の多くが「不正受給」、または「打ち切り」「水際作戦」など、生活保護を受けたくても受けられない、そしてその結果、「孤独死」が起きた、などというものばかりで、「生保のおかげで助かった」とか「生保があるから安心」などの話を一切聞かないからではないでしょうか。
 なんでそんなことになってしまっているのか。「健康で文化的な最低限度の生活を保障する」との憲法条文はどうなってしまったのか。生活保護をめぐる動向から探っていきたいと思います。

10 Jun

 加齢とともに味覚は変化していきます。

昔食べられなかったものが大人になっておいしいと思うことがあるものです。しかしながら、私にはその逆、昔食べられたものが食べられなくなるという体験をいたしました。私は小さな時から肉が食べられず、小学校の給食には本当に苦しめられましたが、なぜかファーストフード店のハンバーガーは食べられました。大学生時代はよくハンバーガーにお世話になりました。ところが、先日久しぶりにハンバーガーを食べた途端、思わず「獣臭い・・・」と思ってしまいました。それ以来ハンバーガーが食べられなくなりました。魚ばっかり食べているからでしょうか、ハンバーガーの味が変わったからでしょうか、この味覚の変化の原因はいまだに謎です。

 

さて、先日生活保護法「改正」案(以下、「改正」案という)が閣議決定、国会に提出され、衆議院を通過しました。その「改正」案の内容について少し触れていきたいと思います。

 

「改正」案が提出された目的は、①「保護の決定に際してのより実効ある不正の防止」②「医療扶助の実施の適正化等を図ること」③「被保護者の就労による自立の助長を図るため」とあります。この目的に沿って生活保護法を変えようとしています。

 

①に関しては、生活保護申請時に、申請者が「保護を受けようとする理由」「資産および収入の状況(生業もしくは就労又は求職活動の状況、扶養義務者の扶養状況及び他の法律に定める扶助の状況を含む)に関する書類を提出しなければならない」ことが「改正」案に盛り込まれています。現行法では、生活保護を利用するにあたって、困窮に至った理由は必要ありません。困窮しているかどうかが判断基準なのです。また、個人の資産等は福祉事務所が申請受理後に調査しています。扶養については以前にも書きましたが、「義務」ではなく「優先」であり、民法に定められた扶養関係以外は求められず、世間一般の生活が営める以上に余裕があれば一部扶養してもらうということで、扶養義務者の詳細な収入や資産状況は問われません。つまり、「改正」案では、申請時に書類がそろっていなければ申請すらできず、その親兄弟姉妹にもミーンズテストを課すことを義務付けようとしているのです。先進国の公的扶助制度は、このミーンズテストをいかに緩和していくかが公的扶助の課題とされてきましたが、日本はこれとは全く逆の道を歩もうとしているのです。

 

②に関しては、主に生活保護法指定医療機関について書かれていますが、生活保護利用者に関しては後発医薬品、いわゆるジェネリック医薬品の利用を原則とすることが盛り込まれています。ジェネリック医薬品については以前に問題点など書いていますのでここでは省きますが、新薬の薬価が高価であるという根本的な問題点を覆い隠し、そのしわ寄せを生活保護利用者に押し付けているのではないかと思います。

 

③に関しては、安定した職業に就き、生活保護から「自立」した人に「就労自立給付金」を支給することが盛り込まれています。就労へのインセンティブを図ろうとしていることが窺えますが、「安定した職業」があるのかが問題となってきます。職業開拓を国が行わないと「安定した職業」が増えない、むしろ不安定雇用が広がっている雇用状況下で、生活保護利用者の就労「自立」が個人の責任になってはいないか、疑問に思います。

 

これまでの生活保護制度に関する議論では「利用しやすく自立しやすい」制度にすることが必要と確認されてきました。今回の「改正」案は、利用を妨げる、またはあきらめざるを得ないような内容となっています。いわゆる「水際作戦」を合法化したのと同じです。「保護の決定に際してのより実効ある不正の防止」を目的とするならば、水際作戦によって本来生活保護を利用できるはずが行政の圧力でできなかった、そのような法律違反自体が「不正」であり、幾度となく繰り返されてきたその「不正」を防止することこそが、本来の「改正」案に盛り込まれるべき内容ではないかと思います。

 

元金沢星稜大学非常勤講師 冨家 貴子