「生活保護」という言葉に、みなさんどんなイメージをお持ちですか。
 ポジティブかネガティブかと問われれば、ネガティブな印象をお持ちの方が大半ではないでしょうか。なぜでしょう。それは、生活保護に絡んだ話題の多くが「不正受給」、または「打ち切り」「水際作戦」など、生活保護を受けたくても受けられない、そしてその結果、「孤独死」が起きた、などというものばかりで、「生保のおかげで助かった」とか「生保があるから安心」などの話を一切聞かないからではないでしょうか。
 なんでそんなことになってしまっているのか。「健康で文化的な最低限度の生活を保障する」との憲法条文はどうなってしまったのか。生活保護をめぐる動向から探っていきたいと思います。

08 Nov

 友人に「片付けられない女」と命名されるほど掃除や片付けが苦手(好きではない)な私の部屋は、床やテーブルがますます物、特に書類で埋もれてきています。

 

本屋で片付けの本を読んだり、インターネットできちんと片付いた部屋を見たりするのですが、そんな暇があれば、その時間を掃除や片付けに費やしたらいいのに、といつも反省しています。

 

 さて、前回は厚生労働省生活保護制度「改正」案(以下、『改正案』という)で、生活保護利用前の行政側の調査権の強化等について少し意見を述べました。今回は、生活保護利用後の事について、改正案は何を提案しているのかを少し見ていきたいと思います。

 

この改正案が提出された理由の一つとして、働ける年齢層、いわゆる稼働年齢層の生活保護利用増加という背景があります。そのような背景から、特に就労支援に関しての提案が多く見られます。

 

例えば、①積極的に就職活動をする人には保護費を加算する、②生活保護を利用しながら働いている人の収入の一部を積み立て、生活保護を利用しなくなった時に渡す「就労収入積み立て制度」の創設、③就職活動をせず、生活保護を打ち切られた人が3度目の申請に来たときは就労意欲を厳格に審査すること、などが盛り込まれています。また、生活困窮者を早期に把握するための「相談支援センター」の設置も考えられています。

 

 ①に関しては、現在の生活保護法の原理原則から逸脱するのではないかと考えられます。生活保護費は、その人の生活需要に合わせて最低限の費用を支給するという考えに基づいています。就職活動を頑張ったから保護費を上乗せするという考えは、単に就労へのインセンティブに過ぎません。何らかの理由で働けない人との生活保護費の考え方が根本から変わってしまうものになります。

 

 ②については、生活保護基準以上の仕事に就くことができた場合に限られます。また、積立金を「誰が管理するのか」という問題にもつながっていきます。各福祉事務所が管理するとなれば、ただでさえ膨大なケース数を抱えているワーカーにさらなる負担を強いるか、管理のための予算を編成しなければならなくなるでしょう。③に関しては、どのような基準でもって就労意欲を判断するのか、という疑問がわいてきます。「相談支援センター」については、水際作戦のような申請者を追い返すことを改め、生活保護制度の周知を徹底していけば、わざわざ新しいセンターを設置しなくてもよいのではないか、現行制度に不備があるのではなく、その運用方法に不備があるのではないかと思われます。

 

 就労支援自体は必要なことですし、一般就労が難しい場合の「中間就労の場」を確保することなど、何らかの形で社会に関わる機会の提供案などは、見方を変えると、「就労」するということをより柔軟にとらえるという側面もあるかと思います。しかし、いつも考えてしまうのは、稼働年齢層の生活保護利用が増加したことが悪いように捉えられ、稼働年齢層が生活保護利用を余儀なくされた大きな原因である、非正規雇用などの不安定就労の問題を見えにくくさせているのではないか、生活保護制度を変えても根本的な解決にならないのではないかということです。また、就労支援に重きを置くことで、生活保護制度の重要な目的である、最低生活保障が二の次になってしまわないか懸念されます。実際、厚生労働省は、現行生活扶助基準を低所得世帯の消費実態に合わせて引き下げることをセットで提案しています。

 

 生活保護制度へのバッシングが続く中で、国民がこの案を受け入れやすい心理状況が生まれていると思います。しかし、改正案が実行されたとして、私たちの生活が果たして楽になるのか、私たちの最低生活保障は守られるのか、という視点で見ないと、後でとんでもないことになるのではないかと考えざるを得ません。

 

元金沢星稜大学非常勤講師 冨家 貴子