「生活保護」という言葉に、みなさんどんなイメージをお持ちですか。
 ポジティブかネガティブかと問われれば、ネガティブな印象をお持ちの方が大半ではないでしょうか。なぜでしょう。それは、生活保護に絡んだ話題の多くが「不正受給」、または「打ち切り」「水際作戦」など、生活保護を受けたくても受けられない、そしてその結果、「孤独死」が起きた、などというものばかりで、「生保のおかげで助かった」とか「生保があるから安心」などの話を一切聞かないからではないでしょうか。
 なんでそんなことになってしまっているのか。「健康で文化的な最低限度の生活を保障する」との憲法条文はどうなってしまったのか。生活保護をめぐる動向から探っていきたいと思います。

12 Oct

 9月半ば、急に寒くなってから夏の疲れが出たのか、私の体からSOSが発信されました。疲れがたまると免疫力ががたんと落ちるようになりました。

体力がないのか、年齢のせいなのか・・・。今は、口の周りに吹き出物が次々と出ています。口の周りの吹き出物といえば、救護施設に勤めていたときもずっと出ていたなあ、と鏡を見ながら考えていました。

 

 今回は、その救護施設について少し触れたいと思います。

 

 救護施設は、生活保護法第38条に定められた障害者施設です。生活保護を利用しながら施設で生活を送ります。現在のように、児童福祉法や老人福祉法、各障害者福祉法が無い戦前の救護法時代は、養老院(現在の養護老人ホームにあたる)、孤児院(現在の児童養護施設にあたる)なども救護施設として、生活保護法下に置かれていました。戦後、各社会福祉法が施行され、それとともに、今まで生活保護法下に置かれていた施設は、それぞれの法律に基づいた施設として運営されるようになりました。では、戦後どのような人を対象としたのかをみますと、現在の生活保護法が施行された1950年頃は、何らかの身体障害があり、かつ働くことのできない人を主な対象としていました。知的障害や精神障害がある方は、基本は精神科の病院に入院とし、救護施設は補完的に利用するとされていました。1960年前後は、厚生行政を担当していた方によりますと、当時老人福祉法がなかったので、現在の特別養護老人ホーム対象者で、家族がいない、または家族が介護できない場合は救護施設を利用していたそうです。

 

 私が救護施設に勤めていた大阪は救護施設の数が多く(十数か所あります)、男性利用者のみ対象、女性利用者のみ対象、若年者のみ対象など、処遇の関係上対象者を限定している施設もありました。施設数が多かったからこのように対象ごとの救護施設運営ができたのだと思います。

 

 私が勤めていた施設は平均年齢が60歳を超えており、高齢の方が多い施設でした。規模は200人定員で、男女各100人の利用者がおられました。利用者は、重複障害の方と精神障害の方が多く、精神障害の方(重複障害も含む)が半数を占めていました。精神障害の方が多いのは、精神科の病院の長期入院が問題視されてからです。施設を長年利用されている方の中には、戦争の空襲で重い障害を負ったり、戦災孤児となって自分の本当の名前も分からなかったりする方もいらっしゃいます(名前は児童養護施設や知的障害児施設などで職員がつけていたそうです)。行旅病人(いわゆる行き倒れ)の方もおられます。

 

 私が勤めていた期間、施設を利用される方は精神科の病院で入院の必要はなくなったが、自宅に戻れないという方がほとんどでした。知的障害があり、家族の事情で緊急に施設を利用しなければならない方も何人かいらっしゃいました。何年か経つと、精神障害の方でも依存症の方の利用が増えてきました。DVを受けて婦人相談所に一時保護され、何らかの障害があると分かり、女性自立施設を利用するのが難しい方や、一人暮らしで、要介護度が低いため介護保険の入所施設をすぐ利用することができず、救護施設を利用される方もいました。

 

 自治体の事情で他の施設が統廃合になったり、措置制度が契約制度になったり、社会福祉施設の利用内容が変わったとき、それらの制度に該当しない人は行き場を失います。そのような人たちを受け入れ、支えてきたのが救護施設です。ですので、現在でも行政を通して利用する措置施設です。

 

 救護施設は、冒頭で述べましたように生活保護法に基づきますので、他の施設基準よりも様々な基準が低く(例えば職員配置など)、あくまで「最低限度」の生活となります。また、その時々の社会情勢などに応じて利用される方も変わってきますので、情勢や社会福祉制度の変化に柔軟に対応しなければならないということが起こります。同時に、社会情勢や社会福祉制度の問題点も見えてくる施設でもあると思います。

 

 今でも、大変だったことや楽しかったことを時々思い出しては、利用者の方はどうしておられるか、考えるときがあります。

 

 

ⅰ老人福祉法の成立は1963年。現在の養護老人ホームにあたる「養老施設」は生活保護法下に置かれており、老人福祉法成立後、老人福祉法下に置かれた。老人福祉法成立後、特別養護老人ホームが設置された。

ⅱ二つ以上の障害を有すること。例えば知的障害と身体障害、知的障害と精神障害、身体障害と精神障害など。

                 元金沢星陵大学非常勤講師 冨家 貴子