「生活保護」という言葉に、みなさんどんなイメージをお持ちですか。
 ポジティブかネガティブかと問われれば、ネガティブな印象をお持ちの方が大半ではないでしょうか。なぜでしょう。それは、生活保護に絡んだ話題の多くが「不正受給」、または「打ち切り」「水際作戦」など、生活保護を受けたくても受けられない、そしてその結果、「孤独死」が起きた、などというものばかりで、「生保のおかげで助かった」とか「生保があるから安心」などの話を一切聞かないからではないでしょうか。
 なんでそんなことになってしまっているのか。「健康で文化的な最低限度の生活を保障する」との憲法条文はどうなってしまったのか。生活保護をめぐる動向から探っていきたいと思います。

05 Aug

  今、サンダーバードの中です。北陸方面の特急は、今年3月11日に「雷鳥」が最終運行を終え、サンダーバードのみの運行となりました。

 

  鉄道図鑑を幼いときに見ていた者としては、あの雷鳥のヘッドマークがなくなったことが非常に残念で、大阪駅のホームに立ちながら「何か愛想がないなあ」と思っていました。大阪駅といえば今年5月、京都駅のように駅ビルを建設しました。中央改札口を出ると案内標識も変わっており、英語で大きく書かれた方角を見ると、北やら南やら意識せずに歩いていた者としては、何か土地勘が狂ったように感じ、「前のまんまがよかった」と心の中で不満を呟いていました。年齢とともに段々新しいものを受け入れ難くなってきたのでしょうか。 

 

 前置きが長くなりましたが、前回少し紹介しました、「生活保護制度の国と地方の協議」第1回資料(以下、資料という)をもう少し見ていきたいと思います。

 

 前回は主に就労支援に触れてきましたが、今回は医療扶助と住宅扶助について少し触れたいと思います。

 

医療扶助に関しては、資料で生活保護世帯の増加とともに医療扶助も増加していることが問題として指摘、取り上げられています。医療扶助は国民健康保険(以下、国保という)が認めた診療内容に準ずるとされていること、生活保護世帯の中で高齢者世帯が多いことから、国民健康保険と後期高齢者医療制度とで医療費の比較を行っています。そして、一人当たりの受診率が高いため、一人あたりの医療扶助額が高くなっていることを指摘しています。これには、もう少し分析が必要かと思います。

 

 一つ目に、ある市の市長が自ら作成した資料の中で指摘していますが、何らかの障害を持つ方の通院公費医療が障害者自立支援法の成立・施行により自立支援医療となり、自己負担額が高くなったということです。自己負担額が高くなった分は医療扶助から出さざるを得ませんので、当然医療扶助費は増加します。二つ目に、受診率の点については、元々日本の医療保険制度自体が、保険診療に自己負担枠を設けることによって受診を抑制する意図をもって制度設計されていますので、全額医療扶助費によって診療を受ける場合とで受診率が違うのは当然の結果だということです。むしろ、1980年代に国保料の国庫補助率が引き下げられ、高い国保料が払えず、また、受診した時にはすでに手遅れだったという事例が後を絶たないほうが問題だと思います。三つ目に、病気で働けなくなった、何らかの通院治療や入院治療が必要だが医療費が払えないので生活保護を利用した方も増加し、生活保護世帯の中に高齢者世帯が非常に多いことを考えても、医療扶助費が増加するのは当然だということです。

 

 生活保護制度は他方他施策を優先し、それで補えない部分を保障する仕組みになっています。他法他施策が変わり、自助部分が拡大していけばいくほど、生活保護制度にしわ寄せが来るのは当然の帰結です。

 

 住宅扶助に関しては、生活保護利用者に住居と食事を提供し、本人の手元にお金がほとんど残らないほど高額な利用料を徴収する「貧困ビジネス」が横行していることが問題として取り上げられています。私は「貧困ビジネス」を初めて知ったときに、国の最低生活保障制度が搾取の対象になるのかとびっくりしたことがいまだに頭の中に残っています。では、このような貧困ビジネスをなくしていく方向で検討するのかといえばそうではなく、事業として承認し、規制を加えていく方向で検討することとなっています。例えば、住居と食事の提供を「セットサービス事業」として都道府県に届け出し、利用者と事業者との間で契約を交わし、サービス内容及びその対価を明確にする、事業者は都道府県知事の承認を得なければ金銭管理を行うことはできないようにするなどです。これを読んで、日本の持ち家政策が破たんしていることから、安心して住むことのできる公営住宅や公営の施設が必要だと思いました。少なくとも、自分のことは自分でできる方ならアパート探しを支援し、必要ならば布団や家具什器費を支給し(家具什器費は非常に低額ですが)、金銭管理も自分で行うことが自立への第一歩ではないかと思いました。その支援が現在のケースワーカー数で困難であれば、正規職員としてのケースワーカーの増員も必要です。

 

しかし、一番の問題点は、この住宅扶助の検討は、一見すると住居の確保に関する検討に思えますが、真の狙いは本来の生活保護ケースワーカーの役割を、貧困ビジネスを「適正化」することでアウトソーシング、つまり民間委託していく方向だということです。

 

 「生活保護制度の国と地方の協議」第1回資料の議論課題すべて取り上げたわけではありませんが、日本の社会保障政策のほころびがすべて生活保護にのしかかってきていること、それを国の責任で社会保障制度の充実を図り、生活保護にしわ寄せがこないようにする方向ではなく、生活保護制度を「適正化」し、民間委託の対象にしていく方向での検討であると思いました。このような方向で、本当に知事や市長が指摘している問題が解決できるのか、疑問です。

                       元金沢星稜大学非常勤講師 冨家 貴子