「生活保護」という言葉に、みなさんどんなイメージをお持ちですか。
 ポジティブかネガティブかと問われれば、ネガティブな印象をお持ちの方が大半ではないでしょうか。なぜでしょう。それは、生活保護に絡んだ話題の多くが「不正受給」、または「打ち切り」「水際作戦」など、生活保護を受けたくても受けられない、そしてその結果、「孤独死」が起きた、などというものばかりで、「生保のおかげで助かった」とか「生保があるから安心」などの話を一切聞かないからではないでしょうか。
 なんでそんなことになってしまっているのか。「健康で文化的な最低限度の生活を保障する」との憲法条文はどうなってしまったのか。生活保護をめぐる動向から探っていきたいと思います。

31 Mar

 とうとう4月が目前に迫ってきました。ここ金沢では雪がまだちらついております。

 

 地震と津波、原発事故と相次いで災害(人災)が襲ってきています被災地の方々にはお見舞い申し上げます。金沢も少し揺れましたが、どうも実家のある大阪のほうが揺れはひどかったようです。
 
 金沢でのニュースはというと、L特急として親しまれてきた「雷鳥」が3月11日にラストランとなったことでしょうか。サンダーバードは健在ですが、寝台特急に続いてL特急も廃止となってきており、昭和生まれで国鉄時代を知っている人間としては、寂しい気がします。
 
 さて、今回は、ある県の知り合いの方から聞いた話から少し考えてみたいと思います。
 
 新規で生活保護を利用することになった人で、身の回りの日用品などが無い場合、生活保護から「家具什器費」が支給されます。最大で約39,000円です(布団代は別に支給されます)。冷蔵庫や洗濯機、こたつなどが無い場合、新しいものはとても買えないので、リサイクルショップで購入したり、誰かから貰い受けたりすることが多いようです。救護施設に勤めていたとき、利用者がアパート暮らしをするということで、家具什器費で足りないものは、職員が使っていないものを持ち寄ったことがあります。
 
 その家具什器費ですが、知り合いの方によりますと、生活保護を利用することになった方の援助のため、洗濯機が必要だと福祉事務所の職員に話すと、近くにコインランドリーがあるからそれで賄うようにと言われたり、冷蔵庫が必要だと話しすると、近くにコンビニエンスストアがあるから、こまめに買い物に行けばそれで賄えるなど言われたり、購入することが困難になっているとのことです。さらに話を聞きますと、福祉事務所の職員の方はそのような生活でよいと考えている訳ではなく、そのように対応するよう福祉事務所が指導を受けているようで、職員の方も苦慮しているとのことです。
 
 話を聞いて正直驚きました。確かに洗濯機が置けないのでコインランドリーが1階にあるアパートも少なくないですが、それは入居前にそれでもよいと了承したうえでアパートを借りているのです。これから生活を立て直すというときに、近くに店があるから・・という理由で家具什器費を出さないことが本当に生活保護利用者のためになるのかと思いました。
 
 それは、生活を立て直すにあたって、その生活の内容は、今の生活様式に基づいて、最低限これだけは必要なものというのを揃えられて初めて立て直すことができるのではないかということです。例えば近年は冷凍食品も非常に多く出回っています。肉や魚なども冷蔵することを前提にパック詰めされて販売されています。冷蔵庫があることを前提に食料品が販売されているのです。日本では特に単身世帯が多いので、食品を保存するために冷蔵庫は必需品です。このような家事に関わる製品は、家計を上手くやりくりするためにも必要だと思います。
 
 そして、最初に家具什器を揃えておくと、長期的にみれば、生活にかかる費用が安くつき、家計も安定するのではないかということです。コンビニエンスストアがあるからといって毎日食料を買うとなると、スーパーマーケットよりも費用が高くつきます。コインランドリーがあるからといっても、利用回数を重ねると、結局費用は高くつきます。
 
 生活保護で生活できる生活はあくまで「最低限度の生活」ですので、食費や光熱水費などは、金額の是非は別として、最低限必要な費用しか算定されていません。しかも、市場などで安く販売されている金額で設定されています。
 
 生活保護法には二つの目的があります。一つは「健康で文化的な」最低限度の生活の保障です。そしてもう一つは「自立の助長」です。両者とも解釈をめぐって議論がたえませんが、「自立の助長」は、単に生活保護からの脱却をいうのではなく、利用者が一時的にではなく、長期的に生活の見通しを立てられるかどうか援助していくことも含まれていると考えます。そのときに、「健康で文化的な」最低限度の生活がどこまで保障されるのかが、自立の助長を左右します。その一つがこの家具什器費の問題だと考えています。皆さんはどうお考えになられるでしょうか。
元金沢星稜大学非常勤講師 冨家 貴子