「生活保護」という言葉に、みなさんどんなイメージをお持ちですか。
 ポジティブかネガティブかと問われれば、ネガティブな印象をお持ちの方が大半ではないでしょうか。なぜでしょう。それは、生活保護に絡んだ話題の多くが「不正受給」、または「打ち切り」「水際作戦」など、生活保護を受けたくても受けられない、そしてその結果、「孤独死」が起きた、などというものばかりで、「生保のおかげで助かった」とか「生保があるから安心」などの話を一切聞かないからではないでしょうか。
 なんでそんなことになってしまっているのか。「健康で文化的な最低限度の生活を保障する」との憲法条文はどうなってしまったのか。生活保護をめぐる動向から探っていきたいと思います。

08 Dec

 先月、久しぶりに実家の大阪に帰省しました。実家の近所の美容院で

 髪型をチェンジし、ぶらりと梅田の歩道橋を歩いていると、かわいいイラストを販売しているお兄さんに出会いました。そのお兄さんにイラストの描き方を聞いたりしているうちに(高校生のとき美術かデザイン系の学校を志望していました。お金がなくて断念しましたが)、互いにビートルズが好きということが分かり、ビートルズの話をしているところに偶然イギリスの青年紳士が現れました。彼の名はダニエルさんといい、ヨークシャーから日本に来て8カ月と3週間が過ぎたのだそうです。それから3人でMr.ビーンの話やロックの話をしました。Mr.ビーンはイギリス以外にドイツで人気があるそうです。彼のコメディスタイルはチャップリンに似ていると話すと、Mr.ビーンを演じている俳優はチャップリンが好きで、彼の影響を受けているのだそうです。別れ際に、絵葉書1枚200円だけど、3枚買うと500円になると話すと、絵葉書を3枚買って行かれました。イラストレーターのお兄さんは通訳のお礼にと、絵葉書を1枚サービスしてくれました。うそみたいな本当の話です。これが大阪の醍醐味の1つです。出会って話がはずめば、あっという間に友達気分です(中学程度の英語で単に商売を手伝っただけかという気もしますが)。

 

 大変前置きが長くなりましたが、今回は知人と電話で話をしていて思ったことを書きたいと思います。

 近年、生活保護利用者を上手く利用して、板一枚で仕切られた部屋に住まわせ、高い家賃や共益費、食費を取ったり、わざわざ保護費が入金される日に銀行に同行し、引き落とした保護費をその場で家賃などとして徴収したりする「貧困ビジネス」なるものが問題となっています。ここ最近の新聞でこのような記事を見ない月はないのではないかと思います。かと思えば、保証人の居ない人に家を借りるための保証人になり、さらに生活保護を利用するための「貧困への相談援助」も行う非営利事業も生まれています。しかし、貧困への相談援助を非営利事業として行っている人も、収入がなければ食べていけなくなります。低額ながらいくらか相談援助に対する費用をいただくことがあるかもしれません。または、スポンサーを探して援助してもらうことがあるかもしれません。

 電話で話をしていた知人は独立型社会福祉士として、ある県で相談業務を行っています。社会福祉士の相談業務は幅広いのですが、知人のところには生活保護に関する相談が多く寄せられています。というより、相談内容のほとんどが、生活が経済的に行き詰っており、生活保護を利用せざるを得ないものだそうです。相談援助を行うために、相談者と契約を交わし、生活保護を利用し、生活が再建できるまで相談援助を行っています。社会福祉士としての資格をもって業務として相談援助を行うので、相談料を設定しています。知人だけでなく、独立型社会福祉士の方であれば、どの方でも相談料を設定しているのが普通です。

 ここからが知人が抱える悩みです。知人のところに相談に来られるのは、先ほども書きましたように、ほとんどが生活保護につなげなければ生活再建できない人たちです。知人も事務所の運営費や自分の生活費を稼がなければ食べていけませんから、生活保護を利用せざるを得ない人であっても、いくらか相談料をもらわなければなりません。相談料はあらかじめ設定しており、契約書にも記載していますので、前述の貧困ビジネスのように、不当にピンハネするようなことは決してありません。にもかかわらず、周りの人たちからは、生活保護を利用するような人からお金を取るとして、貧困ビジネスのように見られてしまうそうです。いろんな人から批判を受けながら、やっと一部の人に理解を得られたとのことで、知人のバイタリティというかタフさには敬服してしまいました。

 そして、知人の話を聞いて、貧困ビジネスがまん延すると、知人のように真面目に取り組もうとする人たちは、どうして同じような目で見られてしまうのかと考えました。

1つ目は、社会福祉士が業務独占ではないので、知人が行っているような相談援助は、言ってしまえば誰にでもできるものとなっていることです。実際、ボランティア活動で知人と同じような業務を行っている方はたくさんいらっしゃいます。問題は、国家資格を持った社会福祉士による相談援助活動が社会的に評価されていないことだと思います。

 2つ目は、知人はNPO法人として活動していますが、それを評価するシステムがないということです。知人以外にも、真面目に生活相談に取り組んでいるNPO法人はたくさんあります。行政業務のアウトソーシングを推進する立場にはありませんが、行政側も、様々な職種と協力しなければ人々の抱える生活問題には対処できないのが日本の現状です。そうすると、NPO法人などに一定の評価を行い、支援するシステムを構築することが必要ではないかと思います。

 3つ目は、法テラスのように、そこに持ち込まれた相談については担当した弁護士が法テラスから報酬をもらうというようなシステムが社会福祉士にはないということです。これは前述した、社会福祉士が業務独占でないことと、社会福祉士の社会的地位の低さにも関係することかと思います。

 現在、独立型社会福祉士である知人は、いろいろと模索している最中です。知人の話を聞いて、貧困ビジネスと言われる生活保護費の悪徳ピンハネ業者と、真面目に相談援助してその相談料をもらう援助者との境界線って、果たして作られているのかなと思いました。貧困ビジネスと言われた「たまゆら」という簡易宿泊施設も、結局は大変な赤字を抱えていることが分かりました。

「たまゆら」のことも考えると、ますます前述の境界線ってどこにあるのだろうと考え込んでしまいました。皆さんはどう思われるでしょうか。

                      金沢星陵大学非常勤講師 冨家 貴子