「生活保護」という言葉に、みなさんどんなイメージをお持ちですか。
 ポジティブかネガティブかと問われれば、ネガティブな印象をお持ちの方が大半ではないでしょうか。なぜでしょう。それは、生活保護に絡んだ話題の多くが「不正受給」、または「打ち切り」「水際作戦」など、生活保護を受けたくても受けられない、そしてその結果、「孤独死」が起きた、などというものばかりで、「生保のおかげで助かった」とか「生保があるから安心」などの話を一切聞かないからではないでしょうか。
 なんでそんなことになってしまっているのか。「健康で文化的な最低限度の生活を保障する」との憲法条文はどうなってしまったのか。生活保護をめぐる動向から探っていきたいと思います。

03 Mar

 季節はとうとう春になろうとしています。ここ金沢では、春の山菜が並び始めました。

 

 昨年ふきのとう狩りに連れて行ってもらって以来、ふきのとうが好きになり、先日、近江町市場の八百屋で、能登方面で採れたふきのとうを買いました。少し失敗しましたが、ふきのとう味噌を作りました。できたら天ぷらも作ってみたいと思っています。一人暮らしで、おまけに集団行動からはみ出ることが多いので(良い意味で言えばマイペース)、土曜日は時々一人で近江町市場に行っては買い物をしています。買い物は目移りして時間がかかるので苦手なのですが、スーパーと違い、個人商店での買い物(魚は魚屋で買うという買い物の仕方)ができるので、ちょっと楽しみです。
 
そして、春が近付いたということは、雪が降らなくなるということです。大阪生まれの大阪育ちですので、小さい時は雪の降るのがとても珍しく、嬉しいと思ったものですが、やはり、ものには限度があるということがよく分かりました。
 
さて、その大阪にある全大阪生活と健康を守る会から対市・対府交渉の議事録要旨をいただきました。以前、生活保護の医療扶助について2回ほど書きましたが、今回は、現行の医療扶助がどのような仕組みなのか、いただいた議事録要旨で問題としてとりあげられていることは何なのか、簡単に紹介したいと思います。
 
 日本の医療保障は、「皆保険」制度といわれるように、誰もが何らかの健康保険に加入しなければなりません。しかし、生活保護を利用している方は、生活保護独自の「医療扶助」から診察や検査・投薬の現物給付を受けます。何らかの健康保険制度から外れることになりますので、保険証のようなものはなく、原則として、病院にかかる度に福祉事務所に「医療券」というものを発行してもらいに行かなければなりません。
 
 また、どの医療機関を利用してもよいというわけではありません。急迫している場合を除き、生活保護法の指定を受けている医療機関の中から選択して受診しなければなりません。小山進次郎はこれを「制限的選択主義」[]と呼んでいます。
 
 全大阪生活と健康を守る会が対市・対府交渉で問題としてとりあげたことは、健康保険証のような医療証制度を作って、福祉事務所に医療券を発行してもらわなくとも診察を受けられるようにできないのか、という点です。
 
 この点は、以前からさまざまな立場の方の間で問題とされてきた点です。現在の生活保護法による医療扶助制度が検討されたのは、皆保険制度が創設される以前で、結核患者などの増加から医療費の増加が問題とされていた、1950年以前です。福祉事務所にて、どのような症状で、どこの医療機関に受診するのかを確認することで、適切に医療を受けられるようにし、法の目的を達成するために「医療券」の方法をとったとされますが、医療費の抑制に重きを置いていたことが窺えます。[]
 
 医療券を福祉事務所に取りに行かなければなりませんので、具合が悪いからといってすぐに医療機関にかかることはできませんし、一般の方のように、保険証を見せるのとは違いますので、受診の際、他の患者からは「自分たちとは違う」という目で見られてしまいます。生活保護を利用することが権利として十分浸透していない日本においては、このことは非常にスティグマ(恥辱感)を感じることだと思います。
 
 2000年に施行された介護保険制度は、生活保護を利用している方で一号保険者(65歳以上)の場合は、一般の方と同じ介護保険証が発行されます。自己負担割合や保険料の違いはありますが、保険者が同じ市町村と考えれば、介護保険と同じように国民健康保険に加入して国民健康保険証を発行できないのか、問われています。
 
ただ、現行の医療扶助成立の議論を考えてみますと、介護保険制度は要介護度によって給付制限がありますので、保険証を発行しても簡単に介護費用の増加にはつながらないと判断されたのではないかと思います。また、介護保険は対象者が限られますが、医療保険となると対象者は赤ちゃんから高齢者まですべての方を対象としますので、簡単に国民健康保険に組み込むことはできないとされたのかもしれません。
 
一番すっきりと解決するのは、医療保険を一つの保険制度にまとめ、その中に生活保護の利用者も組み込む、いや、いっそのこと医療保険制度をなくし、窓口での自己負担分支払いもなくし、医療費を無料とすることだろうなと思います。しかし、そのようなことはすぐに実現できるものではありませんので、全大阪生活と健康を守る会が主張するように、健康保険証のように常に携帯できる医療証を発行し、いつでも安心して医療機関にかかることができるようにすることが、現代の「健康で文化的な」最低限度の生活の保障ではないかと思います。現に大阪市は、休日や夜間、福祉事務所が開いていないときのために、「休日・夜間等診療依頼証」を発行しており、休日・夜間に限り、この依頼証を見せることで受診を可能にしているのです。この枠を広めることはできないものでしょうか。
金沢星陵大学非常勤講師 冨家 貴子


[] 小山進次郎『改訂増補 生活保護法の解釈と運用(復刻版)』全国社会福祉協議会、2004年、p455
[] 前掲、p519-522