「生活保護」という言葉に、みなさんどんなイメージをお持ちですか。
 ポジティブかネガティブかと問われれば、ネガティブな印象をお持ちの方が大半ではないでしょうか。なぜでしょう。それは、生活保護に絡んだ話題の多くが「不正受給」、または「打ち切り」「水際作戦」など、生活保護を受けたくても受けられない、そしてその結果、「孤独死」が起きた、などというものばかりで、「生保のおかげで助かった」とか「生保があるから安心」などの話を一切聞かないからではないでしょうか。
 なんでそんなことになってしまっているのか。「健康で文化的な最低限度の生活を保障する」との憲法条文はどうなってしまったのか。生活保護をめぐる動向から探っていきたいと思います。

24 Apr

 今月の初めに、大学院時代お世話になった全大阪生活と健康を守る会の方から2008年冬季アンケート集計をいただきました。

 このアンケート集計は、対大阪府交渉に向けて、生活保護を利用している方の要望をまとめるために作成されたものです。今回、全大阪生活と健康を守る会の承諾を得られましたので、アンケートの内容を少し紹介したいと思います。御承諾くださった全大阪生活と健康を守る会にこの場で御礼申し上げます。

 

 回答は374世帯で、世帯人数は、1人世帯が252人で67.4%、2人世帯が90人で24.1%です。1人または2人世帯だけで90%以上を占めます。

 

 年齢構成は、60代が最も多く165名で31.5%、70代が139名で26.5%、50代が66名で12.6%です。50代から70代で約70%を占めます。その後30代、40代、10歳未満、10代と続くので、子どものいる世帯が若干含まれていることになります。

 

 自由回答の1つに「生活保護を利用するに至った理由」が記載されていました。全世帯が自由回答に答えておらず、また、どの年代の方のものなのか分からないので、年代と理由の関係は不明です。しかし、200世帯の自由回答を筆者の判断で分類してみると、圧倒的に多いのは「病気・怪我・障害によって働けないため」で62世帯でした。「家族が病気で働けない」なども含むと80世帯でした。「失業のため、事業の倒産などのため」は28世帯でした。単身世帯が圧倒的に多いので、失業や病気などで働けなくなると、第2の稼得者がいないので、生活はあっという間に破たんしてしまうことを表していると思いました。また、仕事を一生懸命探しても、年齢制限のため面接を受けることもできないという方も何人かいました。

 

 家族がいても、複雑な事情を抱えている方が多くいます。自由回答の内容をみると、「脳梗塞になり仕事ができなくなり、また妻も被爆者で色んな病気があり働けないため」「主人が障害者で、そのうえ癌が発生。私はC型肝炎で働けないため」「うつ病になり会社を退職。家から援助ができなくなったため」など、2人とも病気で働けない、仕事が原因で発病し、家族からの援助も受けられないというものでした。

 

 

 そして、次に多いのが「年金をかけることができなかった、または年金が少ないため生活できない」という世帯が25世帯で、「高齢のため働けない」という世帯が16世帯も合わせると41世帯でした。どの年代の方が「高齢のため働けない」と答えているかは不明ですが、年金を支給される年齢だとすると、日本の年金制度がすべての高齢者の生活を保障しているとはいえない現状が浮かんできます。自由回答の内容をみると、「老齢と歩行困難で働くことができず。年金が全部病院代になり、自分の生活ができないため」「70歳以上の仕事がない」「体が弱くなり仕事ができなくなった。夫婦2人の年金87,258円では生活ができないからお願いしました」など、高齢で働けなくなると、生活できる年金額でなければ途端に生活ができなくなるというものでした。

 

 そのほか、世帯数は少ないですが、「子どもが小さいか病気で就職活動が困難または低収入のため」という世帯が4世帯ありました。自由回答の内容をみると、「母子家庭になり、子どもが小さいため収入が少なく、病気や怪我などした時頼れる人がおらず、フルに働けず生活面で苦労していたため」「「子どもの病気などで仕事がスムーズにできず困難なため」などというものでした。

 

 前述したように、年齢と生活保護を利用するにいたった理由の相関関係が分からないので断言はできないのですが、生活保護の利用理由をみて、日本の社会保障制度は、働き手のいる世帯を構成し、また年功序列型の勤務形態を前提に設計されているので、病気を抱えた単身世帯、ひとり親世帯、年金保険を掛けることができる状況にない世帯の場合、頼れるものが何もないということを表しているのではないかと思いました。頼れるものが何もないので、即生活保護を利用せざるを得なくなる現状にあります。

 

 今、3人に1人、20代では約半数が非正規雇用となっており、昨年末からの派遣労働者の解雇、そして再就職もままならず、失業保険も受けられず、生活保護を利用せざるを得ない現状をみて、働いてもまともに食べていけない、貯金もできない労働市場の崩壊が進んでいること、そして単身世帯の生活のもろさを痛感しました。それと今回の自由回答は非常に重なるものが多く、私も含め、今の単身の若年層が病気になったり高齢になったりしたら、このアンケートの自由回答と同じことが起こるのではないかと思いました。

金沢星陵大学非常勤講師 冨家 貴子